夏休み前のバーゲンセールがはじまる。

うちの店も毎年忙しくて、余計なことを考えずにひたすらに黙々と働いていた。


セール中は毎日声を張り上げて呼び込みなんかもして、毎日くたくたになって帰る。

後二日で終わりだななんて思った日曜日、遅番だったから久々にゆっくり眠ってから出勤をした。


タイムカードを押して社員入り口から店に入ると、一回のフロアーに見慣れた少年の姿を見つけた。

ああエイジだと思って、少し遠めで眺めてみる。
そういえば、うちの店の服好きだって言ってたっけ・・・


前に一回買いに来てたこともあったなとぼんやりと思い出すと、すぐ隣にショートカットの可愛らしい女の子がいるのに気がついた。


両手には沢山買い物をした見覚えのある他店の紙袋を提げていて、ああその子の荷物だなってわかる。全部レディースのショップだったし。


エイジはやけに大人びた表情をしてて、愛しそうに彼女を見つめている。

ああ、あんな表情をしているのを初めて見た。



「あれ、エイジじゃん、なに彼女と買い物?」

わざと普通なふりをして私は声をかけた。


「ああ・・・」

エイジは振り返って私を見ると、いつもの無邪気な少年のような顔に一瞬で戻っていた。


何だかやけに挙動不審だ、きっとこんなところを私に見られたくなかったんだろうな。



「こんにちわ~、エイジ君のお友達?」


隣の女の子は、満面の笑顔でそういうけれど、全身で私に虚勢をはっているのがわかる。
ああこの子もエイジの事が好きなんだ。



「何してんだよ、店はあっちだろ・・・」


「私今日遅番だもん、今来たんだよ。」


何だか私もいたたまれなくて、早く店に行ってしまいたかった。




「ふーん、良かったじゃん、彼女できて。めっちゃかわいいじゃん!」

ある意味本心でそういうと、自分の言った言葉に私は逆に傷付いていく。



彼女は不安そうに私をにらみつけると、「そんなことないですよ」なんて強がって言った。


「私はただのライブ仲間だから、安心してね。」


そう言うとエイジは、ずっと黙ったまま俯いてしまう。




「もう全部見ただろ、帰ろうモモ。」


エイジは彼女の手を取って、あっという間にラフォーレを出て行ってしまった。

彼女もエイジに引きずられるように後をついていく。



ああ、私もあんなふうに手を繋いでいればよかったと、そんな風に思った。