日曜日のお昼ごろにエイジからメールが来る。

こんな時間に来るのは珍しい、どうしたんだろう。

”今日のランチ何時ぐらい? 一緒に食べに行かない?”

原宿で働き始めてからは、たまにメールをしてくれるようになった。

土日もバイトしてるみたいだしな・・・



14時ぐらいになると待ち合わせの店を指定してメールを返す。

例の喫茶店以外で食事をするのは初めてだ。




キャットストリートを渋谷方面に入ってちょっと行った路地奥の二階の、カジュアルなカフェ。
お洒落過ぎなくて安くて空いてて、ランチは何時もここだった。


お店に入ると、エイジはそわそわしながら待っていた。

「ごめん、遅くなって。」

「大丈夫、早く来すぎただけだから・・・」


2人で同じ日替わりランチを頼むと、すぐにランチプレートとスープが出てくる。


「俺こういうとこ初めてきたかも。」

キョロキョロしながら、落ち着かないみたいで必死にランチを食べている。


「何時もバイトのときどこで食べてんの?」

そうきくと、ラーメンとか牛丼とか、普通の男子のランチだなって感じのことをいう。


「リンダは何時もここで食べてるの?」

「そうだね、こことか、あっちのカフェとか。たまには私もラーメン行くよ、そこの光麺とかさ。」

「ああ、あそこなら俺もよく行く。」

そういってにっこり笑うエイジを見ているとと、何だかやけに嬉しそうだなって安心する。

ラーメン好きだったんだなあ・・・ そういうのそう言えば、何にも知らないんだなあ。


「そういえば急にどうしたの?」

ランチの時間は短いから、早々と食べ終わると、すぐにセットのコーヒーが来て二人でそれを飲みながら話す。


「今日バイト代出たから、ご馳走したくて、それだけ。」

あれだけいいって言ってるのに、どうしても奢りたいみたいだあ。
何だかそれが可愛くて、今日は素直にご馳走になってみた。



「高校楽しい?」

そうきくと、まあまあだって楽しそうに言う。

「毎日レンが、昼になると俺んとこ来て弁当食べててさ、煩いんだよな。またライヴつれてけとかさ。」

「へえ、仲良いんだね。」

あのりんさんの息子だもんな、きっと良い子なんだろうなって話を聞いてても凄くわかる。

そういえば双子って言ってたけど、もう一人はどんな子なんだろうか?


「レン君って双子なんでしょ?もう一人も男の子?」

「いや、女だよ。このまえレンのうちに行った時に会った。」


あの子の双子の女の子かあ、きっと可愛いんだろうなって思ったら、何だかちょっと切なくなった。
なんだろうこのざわざわした気持ちは。


「その妹の彼氏とかも来ててさ、すっげーイケメンなの。知ってる?A&B-BOYSのビトってアイドル。そいつ。」


ああ確か、Babyの息子って最近騒がれてる子だな・・・

「何でそんな子とつきあえるの?」

私はりんさんがどういう人か知らなかったから、普通に疑問に思ってしまった。


「幼なじみなんだってさ。」

レン君の父親とビトの父親が、有名なアイドルグループなんだって教えてくれる。

そういえば、りんさんも有名な華道家だっていってたな・・・


「りんさんの娘さんなら、可愛いんだろうな・・・」

ポツリとそう呟いてしまうと、可愛かったよってエイジも照れながら話すので、やっぱり何だか胸がざわざわした。


「気になるの?」


「別に、彼氏いる女だしな・・・人のものは取らないよ。」


そんな風に私のことを見つめて言うので、何が言いたいのかちょっとわかった。


「リンダはなんで、うちの親父なんだよ・・・」


なんだ、まだずっと勘違いしたままなんだなってぼんやりと思う、でもそれでもいいや。

「鉄さんは優しいしね・・・」



優しすぎて、そして心の強い人だから、絶対私なんかに手を出さないよ。

そういう父親の素敵なところ、エイジは知らないんだなってちょっとがっかりする。



「ちゃんと鉄さんと話せばいいのに。」

そういってあげると、絶対いやだってまたいつものように拗ねてしまった。