エイジが2才の頃、保育園に行っていたとき、ミチルさんは急に迎えにいけなくなったときがあったという。

育児ノイローゼとでも言うのだろうか? それはいきなりのことだったらしくて、急にすべてを放棄してしまったらしい。

鉄さんはその頃から居酒屋で働いていて、仕事場に保育園からいきなり連絡が入って初めて知ったという。


かなり遅い時間に保育園まで鉄さんがエイジを迎えに行くと、エイジは泣きつかれて眠っていたという。


そのまま家に帰ると、ミチルさんはどこにもいなかった。


寝ているエイジをおんぶしながら、夜中に探し回ると、近所の公園で一人でいるミチルさんを見つけた。


「なんでこの子を生んじゃったんだろう?」

そういってずっと泣いていたんだという…

結婚の約束もする前に子供ができてしまって、まだ何も心の準備ができていないままに、後先も考えず生んでしまったことに酷く後悔していたんだという。



もう育てていく自信がないと泣くばかりなので、鉄さんはしばらく自分一人で育てるからと伝えたんだと。



そこから数ヵ月、一番手のかかる魔の二歳児のエイジと二人で鉄さんは生活して、ミチルさんはしばらく一人で、仕事に専念することになった。



「だけどさ、不思議と別れようとは思わなかったんだよな…お互い。
あのときは一番大変だったけど、ミチルの方が辛かったと思ったから。」


エイジの事を愛しているのに、たまにふと憎らしくなる瞬間もあって、そのジレンマに押し潰されそうになる。

たぶん、どんな母親にもある経験なんだろう…


そのまま本当のネグレストになってしまわぬように、鉄さんがフォローしたんだな…



「数ヵ月でそんな育児鬱も治って、すぐに前のようにエイジと一緒にいられるようになったけど、その反動で今度はずっとエイジが側にいないとたまにパニクるんだあいつ。」


「でも、それと週末婚してるのと、何か関係があるんですか?」


どうしてもそこが繋がらなくてこんがらがる。



「一番母親が欲しいものってなんだと思う?」

そんな事をいきなり聞かれて、そんなこと考えたこともないからわからないとそう答えた。

「一人の自由な時間なんだよ… だからさ、エイジも一人でなんでもできるようになったらそうしようって決めたんだ。」