【黒き雷光① 苦手な奴】

トラベラー「黒き雷光」 と呼ばれて久しい。
この仕事。始める前は、タダのオヤジだった。
だがどうだ。今じゃひとかどの人物になった。
といっても次の客との駆け引きはきびしい。

難癖はいくらでもつけ、要求は困難極まる。
報酬も正規の額さえ出し惜しみ、メチャ値切るし、
それでいて結果を出しても正当な評価を渋るし、
それでいて最上得意なのだからほとほと困る。

今日もまた新たな依頼ひっさげて、もうすぐ
オフィスにやって来るはず。気が滅入る。逃げたい。
だがしかし、私はプロだ。ビジネスに徹する。

席を立つ。嫌な予感だ。逃げようか。いますぐ
一瞬のスキに飛び込む侵入者。逃げたい。
今度こそ無事じゃ済まない。もう駄目な気がする。