几帳の裏から、お母様の声がした。
ご機嫌ね。

「若草、手習いは、進んでいますか。」

そう。
やっぱりね。

「ある程度は………」

衵扇を手に、上品に笑って見せた。

チッ!
またその話なの?

「お母様、今日はご機嫌ね。どうかなさったの?」

お母様が、こんなにご機嫌だったことは、あったかしら。

「あのねェ、若草。」