木南先生は無理をしているだけで、本当は物凄く辛くて、慰めを必要としているとしたら…。
今度は意図的に右手を伸ばし、木南先生の二の腕を捕まえると、自分の方にそっと抱き寄せた。
木南先生を慰めたい気持ちと、早瀬先生に当て付けたい思いがやっぱりあった。
チラっと早瀬先生の反応を伺うと、早瀬先生はオレの期待通りに複雑な表情を浮かべてこちらを見ていた。
そんなくだらない心理戦が繰り広げられている事など気付きもしていない木南先生は、
「…は?」
オレの腕の中で細ーい目をしながらオレを見上げた。
「そんなにショックだったんかい」
そして、的外れな事を言い出す木南先生。
「違いますよ。木南先生が落ち込んでそうだったから、慰めてあげようかと思ったんですよ」
「研修医の慰めが必要になるほど落ちぶれてないっつーの」
木南先生は、オレを馬鹿にしながらオレの腕からスルリと抜け出した。



