「なんで自分の娘の一大事に取り乱すんだろう。早くオペして助けてあげなきゃいけないのに」
画像を見る限り、患者の容態はのんびり構えている場合ではない。
こんな状況で正しい判断を出来ない患者の母親に憤りを感じる。
「大事な我が子の一大事だから、正気じゃいられないのよ」
しかし木南先生は、悠長な事を言っている場合ではない事を分かっていながら、『仕方ない』とばかりに患者の母親に理解を示した。
「木南先生、結婚されてるんですか?」
「してませんが?」
「シングルマザーでもないですよね? じゃあ分からないじゃないですか。母親の気持ちなんか。この患者さん、このまま放っておくんですか?」
木南先生の態度が理解出来なくて反論すると、
「…そうだね。でも、家族の同意がないのならどうしたってオペは出来ない。この患者には麻痺が出る。もしかしたら言語障害や記憶障害、その他にも障害が起こる可能性が十分にある。正義感だけで独断でオペをして、その後の彼女の生活は誰が責任を持つの? 研修医、アンタが一生面倒診るの?
それに、同意もなく勝手にオペして、患者本人やそのご家族に訴訟でも起こされたらどうするの? 医師免許吹っ飛ぶわよ? 私たちは、患者の命よりも何よりも、医師生命を守るのが第一。医師免許を剥奪されたら、救える人命が救われない」
木南先生は正論でオレを嗜めた。



