メーデー、メーデー、メーデー。


 ナースステーション内の空気が殺伐としてしまったのに、

 「私、戻ります。お騒がせして申し訳ありませんでした」

 と、早瀬先生は退散するらしい。

 オイオイオイオイ、早瀬先生よ。どうすんの、この状態。と、心の中をザワつかせながらも、さっきの木南先生の言葉がどうも引っかかり、木南先生がオペを拒否した小児がん患者の電子カルテに視線を戻す。

 「…桃井さん、木南先生と早瀬先生の息子さんの名前って何ですか?」

 早瀬先生を冷たくあしらった木南先生を睨み続ける桃井さんに話し掛ける。

 「早瀬 蓮くんですが」

 「ちなみに歳は?」

 「4歳でした」

 「…やっぱり」

 桃井さんに確認して、木南先生の言っていた『余計な私情』の意味が分かった。

 電子カルテに記載されている患者は『山本 蓮くん 4歳』だった。