「待ってください!! どうしても助けたいんです!!」

 そんな木南先生の手首を早瀬先生が掴んで止めた。

 「早瀬先生なら見て分かるはずでしょう? この腫瘍を取り除く事は今の医学では不可能。仮にオペが出来たとして、この患者さんは薬の効果が出ない転移癌。頭部を切って、あとはどことどこを切り刻む気なの?
 この患者さんは、もってあと3週間。やるべき事はオペではないはずでしょう?
 早瀬先生、しっかりしてください。いつも冷静な早瀬先生らしくありませんよ。余計な私情が挟まってはいませんか?」

 木南先生が鋭い目つきで早瀬先生を睨むと、早瀬先生は掴んでいた木南先生の腕からそっと手を離した。

 「…お時間取らせてしまい、申し訳ありませんでした」

 唇を噛みながら木南先生に頭を下げる早瀬先生。

 「いえ、お気になさらずに」

 木南先生は早瀬先生を素っ気なくあしらうと、今度こそ看護師長の元へ戻って行った。

 そんな木南先生を、桃井さんが睨みつける。