脳外ローテも1ヶ月半を過ぎた。

 藤岡さんはTHBOの仲間との交流により、少しだけだが笑顔を見せる様になった。リハビリにも懸命に取り組んでいる。

 木南先生とは相変わらずだ。ただ、あの1件により、過去の話どころか何となく『早瀬先生』というワードも出してはいけない気になってしまい、そこだけはちょっと神経を使う今日この頃。…だったのに。

 「木南先生、お忙しいところ申し訳ありません。見て頂きたい画像があります。ご意見を伺えたら…」

 ナースステーションで、木南先生と看護師長とオレとで連携確認をしていると、敢えて話題にする事さえ避けていた早瀬先生が木南先生を訪ねてやって来た。

 『何で来ちゃうかなー』としょっぱい顔を浮かべているだろうオレを横切り、

 「何でしょう?」

 木南先生は平然と早瀬先生の方へ近づいて行った。

 社会人として当たり前なのだろうが、あんなに苦しい過去がありながら、私情を挟まず『仕事は仕事』と淡々とこなす木南先生を『強いな』と尊敬する。