エレベーターに乗り、食堂のある階のボタンを押す。

 知らなくても仕事に全く支障ないだろう話。だけど、気になったままだと仕事に影響が出る。などと、自分のさもしい興味を肯定しながら、エレベーターの階数表示を眺めた。

 エレベーターを降り、食堂に入ると、桃井さんはすぐに見つかった。

 丁度良い事に、一緒に食事をしている人はなく、桃井さんはひとりで窓際の席に座り、フォークにパスタを絡めていた。

 「食事中にすみません。ちょっと聞きたい事があるんですが、いいですか?」

 桃井さんの席に近づき声を掛けると、

 「あ、はい。どうぞ」

 桃井さんは快く返事をしてくれ、オレの為に自分の隣の椅子を後ろに引いてくれた。

 『ありがとうございます』と遠慮なく桃井さんの隣に腰を掛ける。

 「…あの、この前の話の続き、聞かせてもらえませんか? さっき早瀬先生に直接聞こうとしたんですけど、『自分からは話したくない。みんな知っている事だから、他の人に聞いて欲しい』と言われました。
 木南先生と早瀬先生の間には何があったんですか?」

 仮にも仕事中。桃井さんも食事中。前置きなんかしている時間はなく、即本題を切り出す。