「それに、木南先生は私なんかより患者さんの事を深く考えている人だよ」
「どういう事ですか?」
『研修医やナースを信頼して任せている』と言った傍から矛盾している事を言う早瀬先生に首を捻る。
「THBOを作ったの、木南先生なんだよ。『手術でも薬でも癒えない傷があるのなら、舐め合ったって馴れ合ったっていいと思う。それが慰めになるのなら。心の支えになるのなら』って」
「…木南先生が。…あの、THBOってどういう意味なんですか?」
実はちゃんと患者さんの事を想っていた木南先生に、ちょっとした驚きとそれを自ら言わないカッコ良さを感つつも、そもそも意味の分からない『THBO』が、やはり気になる。
「サークル名、木南先生が付けたんだけどね。『Two heads are better than one』の略らしいよ。『助け合い』とかそっち系の名前にしないのが木南先生らしいよね」
『ふふふ』と早瀬先生が目尻を下げた。
早瀬先生は、木南先生によって脳外を追い出されたというのに、どうして木南先生の話をしながら笑えるのだろう。



