メーデー、メーデー、メーデー。


 「泣かせてしまってごめんね。今日中に入会を決めろなんて横暴な事はしませんから。ゆっくり考えてみてください。気が向いた時に連絡なり、HPにコメントなりください。本当に気が向いた時でいいですから。気が向かなかったら無理しなくて大丈夫ですから。オレなんかに気を遣う必要は全くありません。実際、全然気が向かなくて、勧誘してから3年後とかに連絡してきたヤツとかもいるので」

 『これ、ここに置いておきますね』と関屋くんは、自分の連絡先とTHBOのHPのURLが書かれた紙を、藤岡さんのベッドの横の棚に置いた。

 「今日はオレの話を聞いてくれてありがとうございました。オレは、藤岡さんと友達になりたいです。今日は自分ばかりが喋ってしまったから、今度は藤岡さんの話が聞きたいです…っていう、最後の最後までTHBOに入って欲しい念を押しつつ、今日のところはお暇します。おじゃましました」

 関屋くんは、『うっかり出し忘れてましたけれど、お見舞いとしてシュークリームを持ってきたのに渡してませんでした。じゃあ、またね』と舌を出しながらおどけると、シュークリームが入った箱を藤岡さんのベッドのスライド式の机に置き、藤岡さんに手を振った。

 「……」

 藤岡さんは何も言わなかったけれど、関屋くんに向かって『ペコ』っと少しだけ頭を垂れた。

 早瀬先生やオレには見せなかった藤岡さんの態度に驚き、何だか泣きそうになった。藤岡さんの心が、少しでも動いてくれた様な気がしたから。