メーデー、メーデー、メーデー。


 「柴田で…「はい。脳外科、木南です」

 木南先生に覚えてもらえなくても別に良い。桃井さんに覚えてもらえればそれで良い。だから、桃井さんに向かって挨拶をしようとした途端、木南先生の白衣のポケットに入っていた携帯が鳴り、オレの自己紹介を遮った。

 「分かりました。すぐ行きます」

 短い会話の後、電話を切った木南先生が、

 「救命にバイクと接触して頭部外傷を負った20歳代の女性が運ばれた。行くよ、研修医」

 オレに電話の内容を一気に話すと、足早にナースステーションを出て行った。

 慌てて木南先生を追いかけようとした時、

 「頑張ってね、柴田先生」

 桃井さんがオレに笑顔で小さくガッツポーズを向けてくれた。

 桃井さん、可愛いのに優しいくていい人。木南先生と違って、オレの名前もちゃんと覚えてくれるし。

 「はい!!」

 モチベーションが大幅にアップ。桃井さんに元気に返事をし、木南先生が向かった救命へ急いだ。