メーデー、メーデー、メーデー。


 「THBOってね、物凄く便利なんだよ。『自分はこういう障がいがあるからあれが出来ない』とか相談すると、仲間が『それはこうすれば出来るよ』ってアドバイスをくれたり、『役所の福祉課にこういう制度があるから相談すると良いよ』とか、生活に役立つ事を教えてくれたりするんだよ。
 障がいを持つ者の集まりだからさ、みんなそれなりに困難にぶち当たって色んな体験をしてきた人たちだからさ、結構豊富な知恵を持っていたりするんだよね。THBOに持ち寄られた知恵を吸収するとね、『アレ? 自分、意外と色々出来るじゃん』ってちょっと楽しくなるよ。
 それに、みんな辛い時期を超えてきた人たちだから、頼もしくて心強い。藤岡さんの今の苦しい気持ちも理解できる人間しかいないから、関わる事で少しは緩和するかもしれないよ。
 とは言えども、人付き合いが苦手な人間もいるし、重度の障害を持っている人もいるから、全員が全員会合に集まる事はないんだよ。でも、交流はしていたいって人の為にHPもあって、そこに掲示板とかもあるから、参加するのに迷っている様なら、そこから始めるのもアリです。
 もちろん強制参加ではありません。嫌なら気にせず断ってください。…と、言いつつも、オレは藤岡さんにTHBOに入って欲しいなって思っています。
 心の傷は、同情されると深まるけれど、共感されれば慰めになります。
 障がいを持ったことで、周りの手助けを必要とする生活になったとしても、オレらは役立たずなんかじゃない。
 藤岡さんの今の苦しみは、今後誰かの心を慰めます」

 関屋くんが『藤岡さんはひとりじゃないよ』と微笑みかけると、藤岡さんは肩を震わせながら嗚咽した。