「藤岡さんは今入院中だから、看護師さんや家族の方に色々と介助してもらいながら生活しているんだと思うんだけど、それって結構劣等感があるじゃない? 健常者からの介助や親切って有り難いけど、『障がいがある私に親切心振りまいて悦に浸ってるんじゃないの?』とか思って卑屈になったりしない? オレはなったんだけどね」
「…私もです」
関屋くんの質問に、藤岡さんがポツリと答えた。
「だよね。だってオレ、ボランティアとかする人って尊敬するけど、心の中で『可哀想な人に手を差し伸べる自分、素敵!!』って自分に酔ってる部分がちょっとはあるって思ってるもん。まぁ、ボランティアって大変な事だから、そう思うくらい別に良いと思うけどね。やらないヤツの100億倍は素晴らしい人間だと思うし。…って、話が逸れちゃいましたね。つまり、何が言いたいかというと、健常者からの気遣いや手助けは有り難いし絶対に必要なんだけど、それによってこっちが心が傷つく事がある。その事実を健常者側に伝えても、親切心を否定されて良い気はしないだろし、『じゃあ、もう手なんか貸さない』って言われたらうちらも困るし、優しい心を持つ健常者も『困っている人に手を貸さない自分』になるのは心が痛んで出来ないと思うんだ。
『健常者と障がい者が手と手を取り合う』事が理想的。でも、どうしても交われない部分が、どうしたってあると思うんだ。でも、障がい者同士だったら共感し合える」
「……」
関屋くんの目を見つめていた藤岡さんの目から涙が零れた。



