メーデー、メーデー、メーデー。


 それでも関屋くんは笑顔を崩すことなく藤岡さんのベッドの近くに車椅子を動かした。

 「THBOの関屋です。はじめまして」

 顔の見えない藤岡さんに、先ほどと全く変わらない自己紹介をする細川くん。

 「……」

 藤岡さんは無反応だった。そりゃそうだ。早瀬先生も関屋くんも当たり前の様に『THBO』と言うけれど、その存在を知っている人は限りなく少ない事に気付いて欲しい。

 「『THBO』というのはサークルの名前で、今日は藤岡さんを勧誘に来ました。オレは事故で脊髄を損傷して車椅子の生活になりました。THBOは、怪我だったり病気だったりで、健常者と同じ生活をするのが難しい人間が集まるサークルです」

 関屋くんがやっとTHBOの概要を話すと、

 「…障がい者は障がい者同士で仲よくやれよって事」

 藤岡さんは顔を出すことはなかったが、布団の中で反応を示した。