メーデー、メーデー、メーデー。


 どうしたもんかなぁ。と藤岡さんの病室の前で、中に入るのを少し躊躇っていると、

 「柴田先生、入らないんですか?」

 背後で名前を呼ばれた。声の方へ顔を向けると、早瀬先生と車椅子の男性がいた。

 「あ、お疲れ様です。早瀬先生。…あ、藤岡さんのお見舞いですか?」

 早瀬先生に挨拶をすると、車椅子の男性に話掛けた。

 「あ、こちらは先日私が『藤岡さんに会って欲しい人がいる』と言っていた…『THBOの関屋です。はじめまして』

 早瀬先生が紹介する前に、にこやかに自己紹介をしてくれた車椅子の男性。…が、

 「THBO?」

 聞いたこともない、社名なのか何かの団体なのかも分からない、そのアルファベット4文字に首を傾げる。

 「あ、サークルの名前です。関屋くんはTHBOの代表なんです。本当はもう2、3人連れて来ようかと思ったのですが、知らない人間が大勢で押しかけるのもどうかと思いまして、今日は一番面倒見の良い関屋くんに来てもらいました」

 早瀬先生が、オレのTHBOの正体を説明しながら関屋くんに『来てくれてありがとうね』と笑顔を向けると、『お安いご用です』と関屋くんが笑い返した。

 早瀬先生と関屋くんは、どんな話をする為に藤岡さんに会いに来たのだろう。