メーデー、メーデー、メーデー。


 「木南先生は…」

 『木南先生は、どうして早瀬先生を脳外から追い出したんですか?』

 訊きかけて、やめた。

 今のところ、木南先生とは上手くやって行けている。聞いてはいけない事だったとしたら、この関係は崩れてしまう。知りたい気持ちは大きいが、仕事のやり易さ、医師としての成長の方が遥かに大事。馬鹿にされながらでも、木南先生の元で色々教わりたい。木南先生は、早瀬先生ほどの人情はないが、腕は確かである事をオレはこの目で見ているから。

 「何?」

 木南先生が、話し掛けてやめたオレの顔を覗き込んだ。

 「もうお昼の時間ですよ。木南先生はゴハン食べに行かないんですか?」

 だから、壁掛け時計を指さしながら咄嗟に質問を変える。

 「私、満腹になると脳が冴えないの」

 木南先生は、今日も昼食を抜くらしい。

 「とか言って、ダイエットしてるんじゃないですか? 女子っスね」

 「うるさいわ。ちょっと午後からのオペに集中したいからどっか行って、研修医。大盛りの社食でも食べてブクブク太れ」

 オレにからかわれてイラついた木南先生が、『シッシッ』と右手を振りながらオレを追い払った。