メーデー、メーデー、メーデー。


 「ところで研修医、藤岡さんの様子はどう?」

 木南先生は、藤岡さんの診察はせずとも、気にはしてくれている。

 「柴田です。今日も大騒ぎでしたよ。桃井さん、ほっぺた叩かれてましたし」

 なので、しっかり報告。

 「そこで『桃井さんに何て事するんだよ!!』とか言って桃ちゃんの壁になりながら守ったりなんかしたら、桃ちゃんの気持ちも0.1ミリくらいは研修医に傾いたりするんじゃない?」

 完全にオレの恋心を面白がっている木南先生が、古臭い少女マンガの展開を提案しながら笑った。

 「似た様な事はしましたよ。桃井さんを藤岡さんから少し遠ざけたら『私は恋愛も結婚も出来ないかもしれないのに、お前の恋愛見せつけるな!!』って藤岡さんに激怒されました」

 「藤岡さんの怒りは正しいわ。研修医の恋愛の為に自分を悪者にされて道具にされたら、たまったもんじゃないわ」

 「イヤイヤイヤ、さっきと言っている事が違うじゃないですか」

 コロッと意見を変えた木南先生にすかさず突っ込むと、

 「前者が間違い。後者が正解。誰にだって間違いはある。ただ、私は研修医と違ってすぐに間違いに気付くし、イレウスも見落とさない」

 木南先生は、過去のオレの失敗をディスりながら開き直った。