「…ねぇ先生。私はこれから恋愛出来るかな。結婚出来るかな。私を好きになってくれる人なんか現れるのかな」
オレを睨み続ける藤井さんの目に涙が溜まる。
「…出来るよ、きっと」
気休めなど言ってはいけないと分かっているのに、ネガティブな事を言うのはもっと違うと思い、何の根拠もない答えを口にしてしまった。
「…何それ」
だから当然藤岡さんの怒りを買ってしまう。
「先生、この看護師さんの事が好きなんでしょ。よく私に自分の恋愛見せつけられるよね!? どういう神経してるんだよ!! ふざけんなよ!! 出て行け!!」
そう叫びながら大粒の涙を流した藤岡さんが、震えながら枕を掴み、それをオレたちの方へ投げた。
当然届かないし、方向も違うところへ落ちた枕。
「わぁぁぁああああ」
そのもどかしさ、悔しさに、藤岡さんが泣き崩れた。