ローテでなんとなく色々な科を巡り、今日もなんとなく脳外の医局に足を踏み入れた。

 「失礼します。今日よりお世話になります。柴田です」

 医局のドアを開け、それぞれのデスクで作業をしている医師たちに頭を下げる。

 顔を上げ、周りを見渡すと、自分以外に研修医がいない事に気付く。どうやら今回のローテはオレだけらしい。

 「初めまして、柴田くん。待っていたよ」

 パソコンのキーボードを叩いていた30代半ば位と思われる男性医師が、手を止めて立ち上がり、オレの近くに寄ってきた。

 「宜しくお願いします」

 再度頭を垂れると、

 「ごめんねー。柴田くんのオーベン、オレが頼まれてたんだけど、木南先生に交代になったんだー。木南ー。ちょっと来てー」

 男性医師は苦笑いを浮かべながらオレに手を合わせると、木南先生らしき女性に向かって手招きをした。

 「はーい」

 奥のデスクでパソコンを弄っていた女性医師が、マウスから手を離し、こちらにやって来た。