「え? なんでですか?」

 わけが分からず、早瀬先生に首を傾げると、

 「グリブラのオペだよ? 長丁場になるって分かり切っているオペだよ? そんなオペに寝不足なうえに空腹で挑むほど、木南先生は馬鹿じゃない。早く行って!! 柴田くん!!」

 早瀬先生は、今まで聞いた事もないような大声を出し、素早く野村さんの頭部の縫合に取り掛かった。

 「…行ってきます!!」

 看護師さんが用意してくれたストレッチャーに木南先生を乗せ、オペ室を飛び出した。

 何なんだよ、早瀬先生のあの言い方。あれじゃあまるで…。

 早瀬先生の話に胸をザワつかせながらMRI室へ木南先生を運び、検査をした。

 MRI画像を見て、木南先生が病院を辞めた本当の理由を知る。


 「…『時間との勝負』って、『体力が保たない』って、自分の事だったのかよ」