メーデー、メーデー、メーデー。


 「…やってみます」

 さっきまで木南先生がいた場所に立ち、自分で選んで良いと言われたが、木南先生と同じスパチュラーをオペ看から受け取り、腫瘍の剥離を試みる。

 緊張と自信のなさが相まって、スパチュラーの動きもかなり遠慮がちになってしまう。そんなオレに、『もっと深く。もっと切り込んでも大丈夫』『そこでストップ』『スパチュラーの角度を2度傾けてあと3㎜剥離して』と木南先生の適格な指示が飛ぶ。

 木南先生の言う通り手を動かすと、自分で言うのも何だが上手く剥離が出来た。

 それが自信になったかというと、いくら単純なオレといえどもそんな事はないが、オペへの恐怖が薄らいだ。

 木南先生は、比較的見やすい部分だけをオレにさせると、

 「よし、お疲れ様。あとは私がやる」

 オレと交代して境目が曖昧な腫瘍の除去に取り掛かった。