メーデー、メーデー、メーデー。


 オレには木南先生がついている。早瀬先生もいる。大丈夫。

 「はい。頑張ります」

 深呼吸をして、何回か肩を揺さぶると、野村さんの頭部にメスを入れた。

 ドリルで骨を削り、野村さんの脳を露出させると、モニターに映し出す。

 「よし。じゃあ、剥離しよっか。スパチュラー」

 木南先生がオペ看に剥離子を要求し受け取ると、腫瘍周囲の脳溝、脳裂の剥離解放の作業に取り掛かった。

 周囲の血管を損傷させない様、慎重に進めなければならない中、やはり木南先生の手の動きは早かった。

 「…凄い」

 オレの思わず零れ出た感嘆の声に、

 「ちゃんと見てた? 研修医」

 木南先生がしたり顔でドヤって見せた。

 「はい。流石です」

 いつもなら木南先生のドヤ顔にツッコミを入れているところだが、あまりの素晴らしさにそんな事をする気にもならなかった。