「では、始めましょうか」
木南先生の一声で手術が始まった。
麻酔医が麻酔薬の薬物動態を推測しながら野村さんに麻酔をする。暫くすると、
「はい。もう行けます」
麻酔医が木南先生に開頭OKのサインを出した。
「はい。じゃあ頭開いて。研修医」
そして木南先生がオレに指示を出す。
「はい。…え?! 私が?!」
『いきなりオレかよ!!』と目を見開きながら木南先生の方を見ると、
「そう、あなたが。それくらい出来るでしょう? 医者なんだから」
木南先生の伝家の宝刀『医者なんだから』が飛び出し、拒否権を奪う。
「……」
反論出来ずにしどろもどろになりながら固定器で野村さんの頭を固定。
「落ち着いてやれば大丈夫。頭皮を切って頭蓋骨を削るだけですよ」
そんなオレを、早瀬先生が心配そうな目をしながら励ましてくれた。しかし、早瀬先生にとっては朝飯前の事でも、オレにとってはそんな風に簡単に言える作業ではない。



