メーデー、メーデー、メーデー。


 「じゃあオレ、野村さんと早瀬先生のところに行ってきますね」

 今度こそ医局を出て行こうとドアノブに手を掛けると、

 「ほーい」

 と言いながら、木南先生が仮眠室の方に向かって行った。

 「…寝る気ですか?」

 諸々の事をオレに押し付け、まさかこの人…。と木南先生に問いかける。

 「昨日遅くまで荷物纏めてて寝不足なんだもん」

 木南先生が『んー』と言いながら伸びをした。

 『クソが!!』という言葉が喉元まで出かかったが、力技で飲み込んだ。

 無理を言ってオペを頼んだ手前、そんな事は言ってはいけない。

 『落ち着け、自分』と胸元を擦りながら自分で自分を宥め、

 「おやすみなさいませ」

 木南先生に引き攣っていただろう笑顔を見せると、医局を出た。