メーデー、メーデー、メーデー。


 よく見ると、破損して裂けている部分に捻れが確かにあった。

 オレは今まで、大学時代も研修医になってからも落ちこぼれた事がなかった。

 それなのに、イレウスは見つけにくい病気じゃないのに、見つけられなかった。

 「川原さんはバイクの運転中に激しい腹痛に襲われ、ハンドル操作がままならなくなり、歩行者に気付くのも遅れて事故を起こしてしまったのかもしれない。腸管の破裂が大きいのも、そもそもイレウスによって穴が空いていたところに外部からの強い衝撃が加わったからかもしれない」

 自分の不甲斐無さに肩を落とすオレに、木南先生が話を続ける。

 「…そう…だったんだ…」

 「さぁ? あくまでも私の想像で仮説。だけど、川原さんがイレウスであった事は間違いない。腸管破裂も、傷口を見れば破裂前に穴が空いていたのかいなかったのかはなんとなく分かるけど、今はそんな事はどうでも良い。それによって川原さんに施すオペが変わるわけではないから。…という話を聞いて、『あぁ、川原さんの不注意で起こった事故じゃないんだ。じゃあ早く助けなきゃ』などと思ったのなら、アンタは本当に医者にはならない方がいい。医師免許に人の善悪を判断し裁く権利なんかない。それは、然るべき権限を持った職業の人がすべき仕事。医者の仕事は、人間の命と健康を守る事だと私は思っている。違う?」

 「…違わないです」

 木南先生に腹の内を見透かされて、反論する気にもならない。というよりも、反論の余地がない。