メーデー、メーデー、メーデー。


 「よし、じゃあ戻るよ」
 
 オレのやる気を汲み取ってくれたのか、木南先生は機嫌を直すと、さっきまでいたオレのデスクまでオレの背中を押した。

 そしてオレのデスクの引き出しから患者さん用の手術説明用紙を取り出した木南先生が、

 「今回のオペは、腫瘍の大部分は一塊切除、深部や機能領域近傍はCUSAで吸引除去しようと思う」

 オペの手順を図にして説明した。

 「はい、これを野村さんに説明してオペの同意書貰ってきて」

 そしてスッとその紙を滑らせ、オレの方へ置いた。

 「オレがですか?!」

 「アンタ、担当医でしょうが」

 木南先生が『さっさと行けと行け』とオレを急かす。

 「執刀医が説明した方が良いんじゃないですか? 木南先生、まだ野村さんとお会いしてないですよね? 挨拶がてらに行ってきたらどうですか?」

 グリブラのオペをした事も見た事さえもないオレの説明で良いのだろうか? と疑問に思い、手術説明用紙を木南先生の方へ戻してみたが、

 「本来有休中の私を必要以上に働かせないでくれない? 野村さんの病室には後でちゃんと顔を出すわよ」

 やっぱり突き返された。