メーデー、メーデー、メーデー。


 「無理ですよ!! 出来ません!!」

 『2年目の研修医に何を言っているんだ』と木南先生に向かって首を左右に振った。

 「私の『無理』は通らないのに自分の『無理』は正当だとでも言う気?」

 木南先生の反論は『だったら私もオペを拒否します』の意を含んでいる。

 しかし、木南先生の『無理』とオレの『無理』とでは誰がどう見ても大きく違う。

 「このオペは時間との勝負なんですよね?! なんで何の戦力にもならないオレをオペに入れるんですか?!」

 「アンタ、医者でしょう? 医師免許持っているんでしょう?」

 『医者ならやれよ』という木南先生の言い分。

 「専門医ではないじゃないですか。オレはただの研修医です」

 だけどオレは、やりたくないから拒否をしているのではない。出来ないから『無理』なんだ。

 「研修医だったら自分の担当患者を丸投げしてもいいんだ。楽でいいね、研修医って」

 木南先生は『ガッカリだわ、研修医』と言うと、オレのデスクから離れ、医局から出て行こうとした。