メーデー、メーデー、メーデー。


 待つ事15分。木南先生が医局に現れた。

 医局員が『どうした、木南』と言いながら木南先生を取り囲む。

 『急用が出来た』と人の輪から出てきた木南先生が、『CT、見せて』とオレのデスクにやって来た。

 『これです』とパソコンに野村さんのCT画像と、電子カルテを映し出す。

 「野村和幸さん、62歳、作家。…厳しいなぁ」

 患者情報を確認し、CT画像に眉を顰める木南先生。

 「オペ、出来ますか?!」

 そんな木南先生の顔を覗き込むと、

 「腫瘍の場所が…良いようで悪い。術後、小説が書けなくなる可能性がある」

 『私の顔じゃなくて画像を見なさいよ』と木南先生がパソコンを指差した。

 腫瘍の位置は右前頭葉の先端。大部分を切除出来、術後の治療が上手く行けば余命を伸ばす事も可能。しかし、左半身の麻痺、失語症の発祥確率が高い。

 それでも野村さんが命を優先するのなら…。助けられるのなら、助けたい。

 「野村さんに説明してきます。それでも野村さんがオペを希望したなら、やってくれますよね?! 木南先生!!」

 木南先生に最早強要に近いお願いをすると、

 「オペをするなら条件がある」

 木南先生はすんなり受け入れてはくれず、交換条件を要求した。

 「それは、何ですか?」

 オペが出来るなら、どんな条件であっても何がなんでもクリアする。