熱弁を振るうオレに根負けしたのか、木南先生は『ふぅ』と小さな息を吐くと、
「…分かった。診るだけ診る。でも、無理だと判断したらオペはしない」
快諾とは言い難いが、首を縦に振ってくれた。
「ありがとうございます!!」
嬉しさ余って、思わず木南先生の手を取り握った瞬間、
「その代わり、これで私がアンタのオーベンを最後まで全うしなかった事についてはチャラって事で」
思いっきり振り払われた。木南先生は、オーベン変更について文句を言うオレにイラっとしていたらしい。でも、木南先生にとっては『たかがオーベン』なのかもしれないが、オレにとっては大きな問題だったんだ。
「了解しました」
『相変わらず扱いが酷い』と言いながら振り払われた手を後ろに引っ込める。
「目上の人に対しては『承知しました』ね」
更に、些細な言葉使いまでも指摘してくる木南先生。
「細かッ!!」
『面倒臭いなぁ、もう』と突っ込みを入れると、木南先生が『フッ』と息を漏らして笑った。
やっとにこやかな木南先生の顔が見れた。
手術の約束を漕ぎ着けた後は、軽い仕事の話をしてアドバイスを貰ったり、桃井さんと何の進展もないという恋バナをして馬鹿にされたり、久々に木南先生とたわいもない話をした。楽しかった。
そして、野村さんの脳のCTを取り直したら木南先生に連絡をするという段取りを決めて、木南先生の家を後にした。



