「私が私の有休をどう使おうが、私の勝手でしょう? のんびり引っ越ししていたって、とやかく言われる筋合いないと思うけど」
カップで顔を隠し続けるオレに、木南先生が『おかわり飲む?』とティーポットを近づけた。『大丈夫です』と断り、俯いたままカップをテーブルに戻す。
「…それはそうですけど、『忙しいから無理』なんじゃないんですか? 家庭の事情で病院を辞める事は仕方がないです。その事についてどうこう言う気はありません。でも酷いですよ、木南先生」
そしてそのままポツリポツリと話し出す。
「……」
やっとオレの話を聞く気になったのか、木南先生は黙って耳を傾けてくれた。
「木南先生、山本蓮くんが亡くなった時に言っていたじゃないですか。『助ける事が出来たなら、誰も悲しまずに済んだのに』って。グリブラの患者さんは、そりゃあ根治は難しいかもしれません。でも、木南先生ならオペが出来る患者さんなんですよ!? 忙しくないならオペする時間くらいあるでしょう?! それに、急いで引っ越しする必要がないなら、オレのオーベンだって最後まで出来たじゃないですか!! 木南先生はそんな風に人を見捨てる人間じゃないでしょう?! どうしちゃったんですか?!」
木南先生が黙った隙に、不満と疑問を爆発させた。



