「だって私、もうあの病院の人間じゃないし」
『自分には関係がない』とばかりに、オレの話を真剣に聞こうとしてくれない木南先生。だから、
「まだあの病院の人間ですよ。今、有休中なんですよね? しっかり籍残っているじゃないですか」
オレの反論にも、
「有休中に仕事をしたら、それは最早有休じゃないでしょうが」
間髪入れずに言い返す。
「だったら有休日をずらせば良いじゃないですか」
が、オレも負けない。負けたら終わりだ。野村さんのオペが出来なくなってしまう。
「引っ越しの荷造りで忙しいの」
「手伝いますから!! …てか、引っ越しの準備やってます?」
ふと周りを見渡すと、ダンボールなんか1つもないし、今いるリビングは手を付けている様子は一切なかった。
「リビングは1番最後。他の部屋からやってるの」
木南先生が『他人の家をジロジロ見るな』と、オレのあちらこちらに動き回る黒目を注意した。



