『…はい』

 おそらく木南先生の部屋のインターホンにはオレの姿が見えるのだろう。木南先生が気怠そうに返事をした。

 「お疲れ様です。柴田です」

 『柴田?』

 「研修医の!!」

 『あぁ。研修医の』

 「何回やるんですか。この件」

 さっきと全く同じ会話が時間の無駄過ぎて『早く中に入れてくれ』とばかりに貧乏ゆすりをしてしまう。

 『研修医こそ何しに来たのよ』

 「木南先生にお願いがあって来ました」

 『電話の件?』

 「はい」

 『それは無理だと言ったはずです。お引き取り下さい。さようなら』

 またも一方的に木南先生にインターホンを切られてしまった。が、ここまで来たからには粘る。絶対に諦めない。