「木南先生、今どこですか?」

 真っ先に木南先生の所在地を確認。実家に戻られていたら困る。こっちに留まっていてくれないと、呼び戻すのが難しい。

 『家だけど』

 「実家の?!」

 『イヤ。まだこっちにいる。引越し作業中』

 急を要しているオレとは正反対に、のんびりとした木南先生の返事。
 
 『どうしたの? 私の患者さんだった人、誰かトラブってる? 大丈夫?』
 
 木南先生は、引き継ぎ時間がほとんどなかった事に責任を感じている様で、申し訳なさそうにオレの電話の理由を伺った。
 
 「誰もトラブってません。新患の相談です」

 『それは春日先生に相談しなさいよ。私はあなたのオーベンではありません。あなたのオーベンは春日先生です。それでは』

 しかし、自分に関係のない話だと分かった瞬間に電話を切ろうとする木南先生。