「だって、歩行者の方の家族の同意、取れてないじゃない」
木南先生は『何でそんな簡単な質問をしてくるんだ』とばかりに、面相臭そうに答えた。
「だからって、腸管破裂の方は加害者なんですよ?!」
「加害者じゃなくて、川原さん。医者が助けられる命から順番に治療するのは当然でしょ」
オレの名前は覚えようともしないのに、患者の名前はしっかり記憶する木南先生。
そんな、オレと意見の噛み合わない木南先生に苛立ちを覚える。
「助けるべき命から順番に治療すべきです」
「研修医、アンタ医者に向いてない」
木南先生が、相変わらずオレの事を研修医呼びしながら、オレが医者である事を否定した。
それがあまりにも腹立たしくて木南先生を睨みつけると、木南先生が鋭い視線を返してきた。



