「…何やってんだ、オレ」

 木南先生に振り払われた手を見つめて立ちすくむ早瀬先生。

 木南先生があんなに怒って、傷ついて、涙まで見せていたというのに、早瀬先生が追いかける事が出来ないでいるから、

 「木南先生!!」

 オレが木南先生を追いかける。

 名前を呼んでも木南先生は立ち止まってくれなかったが、すぐに木南先生に追いついた。

 「…いい性格してるよね、研修医。普通、気を遣って席を外すところを、しっかり最後まで聞くんだもんね」

 木南先生の隣に並ぶと、木南先生は涙を引く事が出来ないまま、いつも通りの嫌味を言い出した。

 「根性が野次馬なもので」

 この嫌味には乗らなければいけない。木南先生がオレとはいつも通りでいたいと思っているという事だから。