「蓮はあの日、知らない女に『お父さんの友達だ』と言われて連れ去られて殺された。それがどんなに怖かったと思うの?! どうして蓮のお墓に蓮の知らない女の人を連れて来られるのよ!!」
目に涙を浮かべながら早瀬先生を睨みつける木南先生。感情的になる木南先生を、初めて見た。
「桃井さんがそんな人じゃない事は知っているじゃないですか」
「知っていますよ、私たちはね。だけど蓮は知らない。4歳の蓮には桃井さんが良い人か悪い人かの判断は出来ない。知らない女の人は皆怖く見えるでしょうよ。
桃井さんが蓮のお墓参りに行きたい理由は理解出来なくはない。でも、大人なんだから我慢できるでしょう? でも蓮は4歳なのよ。どうして4歳の蓮の恐怖ではなくて、桃井さんの気持ちが優先されるの?
あなたが誰と恋愛しようが付き合おうが、そんなのどうでもいい。私には関係ない。
ただ、蓮の気持ちを無視する事は絶対に赦さない」
木南先生は『泣いてたまるか』と言わんばかりに、涙が零れる寸前で早瀬先生の手を振り払うと、身体の向きを変えて歩き出した。
木南先生の真意は『嫉妬』などという低次元のところにはなかった。



