みかん。


みかんだった。

その人の第一印象は、みかん。




私は高校3年生になった。

とうとう受験生になってしまって、
私の高校生活、まじでなんもなかったな。と思った。

好きな人はそれなりにいた。
1年の時は同じクラスの人が好きだった。
2年では部活の人を好きになった。

私は、いつも脇役だった。

このまま何もなくて終わるのだと思うと、せめて高2をやり直したいと思ったし、戻ってもどうせ同じかとも思ったし、とにかく受験生になるのが嫌だった。


私の通う高校は、いわゆる進学校で、毎年W大学に70人くらい受かる。最後までクラスの3/4は国公立を志望する。

整いすぎたと言えるこの環境で、私はそれなりに勉強すれば、それなりの大学に行けるだろう...。
そんな風に考えてた、4月。


クラス替えをして、最初のホームルームで私たちは絵しりとりをした。

列ごとに対決をして、一番最初に終わった列が勝ち。

私の列の最後がその人だった。
黒板の"海"の絵を前にその人はしばらくうーん...って考えて、

みかんを描いた。

それみかん?いや、ヘタクソ!!!
爆笑してから気づく。




・・・負けじゃん。
私たち、負けじゃん。
何やってんの嘘でしょ?ん で終わってお前負け~~~~~~!が許されるのは、昼休みだけじゃん
暇つぶしで仕方なくやりました~みたいなしりとりだけじゃん!
爆笑。

「あ、やっべえ!!ごめん!!!」

本人も描いてからすぐ気づいて、チョークを持ったまま振り向く。

「おーいー、佐藤何やってんだよ~~~~!!!!」
去年から同じクラスだったのか、男子が叫ぶ。
佐藤くんって言うのか。
聞いたことある。

「ごめんほんと笑笑笑 みんな、ごめんね!」

列に向き直って、ごめん!って格好をして、本当に申し訳ないと思ってるようだった。
面白い人だな~って思った。
名前を聞いたことがある理由も分かる。
この人、絶対人気者だ。
明るくて、はっきりしてて、男の子って感じ。
モテるんだろうな~。

それが、佐藤くんの第一印象だった。