恋し、挑みし、闘へ乙女

「ありがとうございます」と乙女はピンクのマカロンを手に取る。

「――ストロベリーの香り」
「ええ、南之国の苺専門農園から直送ですって」
「やっぱり果物は南之国の物が一番ね」

丸子と桐子がフフフと笑う。

「そう言えば、月華の君、今日から視察にお出でなのでしょう、その南之国と……」

「西之国に」と言いながら桔梗がニヤリと笑う。

「そういうところが腹黒だと言うの」

蘭子の言葉に「あら、皆様も心の中では思っていらっしゃるのでしょう」と桔梗はその場を見回す。

「――あのぉ、どういう意味ですか?」

コソッと乙女が丸子に耳打ちすると、丸子は「それはね」と説明する。

「知る人ぞ知るですが、月華の君は西之国のお姫様に恋心を抱いていらっしゃるそうですよ」

なんと! 乙女のビックリ眼が丸子を見返す。
そう言えば、と綾鷹の言葉を思い出す。『その内分かる』みたいなことを言っていた……と。

なるほどそうだったのか、あのお菓子を勧めたのはそのお姫様?
美味しそうに食べていた月華の君の姿を思い出し、クスッと乙女は笑う。

「綾鷹様もご一緒に行かれたのでしょう?」

糸子が遠慮がちに訊く。

「はい。一週間のご予定だそうです」
「まぁ、それはお寂しいわね」

苺の言葉に全員が頷く。