恋し、挑みし、闘へ乙女

「もしかしたらそのお洋服、マダム・メープルのものかしら?」

蜜子の耳打ちに乙女はコクコク頷く。すると蜜子は嬉しそうに「そう」と微笑み「とてもお似合いよ」と囁きながら乙女の背に手を添え、中央のソファーへと誘う。

蜜子の紹介で、他の六名も名のある公爵家の奥方ばかりと乙女は知る。年齢は様々だが二十代前半から後半の人ばかりだった。

「この中では私が一番年長者ですのよ」

蜜子は自分は三十一歳だと言う。乙女は嘘でしょう、とお茶を吹き出しそうになった。

コホコホ咳き込む乙女の背を摩りながら、「あらあら、大丈夫?」と蜜子がまたコロコロ笑う。どうやら彼女は笑い上戸のようだ。

「“有閑マダムのお茶会”のことをどのようにお聞きになったかは知りませんが、このお茶会は私の義母が独断と偏見で作った“若嫁の茶会”なの」

「はぁ」と乙女は力の抜けたような言葉を返す。

「現在の主催者は蜜子様で“有閑マダムのお茶会”は愚痴を言い合う会なのです」

参加者の一人、小岩井苺がカラカラと笑う。

「あのぉ、小岩井公爵の……」
「ハイ! 小岩井家長子の若嫁です。確か乙女様と同年齢だと思います」

元気いっぱいに言うが、失礼ながら乙女の目に苺は小学生のように映った。