「ドレスはいいとして、髪飾りがイマイチ地味ですね」

ミミは乙女の全身を眺めながら一つ一つチェックを入れていく。

「綾鷹様のパートナーですからね、完璧にしなくては!」
「どうして?」

乙女は鏡を見ながら「これでいいと思うけど」と自分に向かってニッコリ微笑む。

「何を仰っているのです。綾鷹様ですよ! 社交界一のモテ男ですよ。全女性注目の的ですよ! そんな方のパートナーですよ!」

そんなに念押しするように言わなくても……と思いながら乙女が言う。

「嗚呼、確かにモテ男だったわね」

乙女もパーティーで何度か綾鷹の姿を見かけたことがあった。

「いつも周りには華やかな女性が群がっていたわ」

「ライバル心剥き出しでね」と笑いながら付け加える。

「私は男爵家の者ですから、綾鷹様が参加されるようなパーティーに出席したことがございませんが、お噂はかねがね伺っておりました。さぞかし極上のパーティーなのでしょうね」

ミミが夢見るように宙を見る。

「あんな格式張ったパーティー、つまらないだけよ。私は街中のダンスホールの方が楽しいと思うわ」

「まさか」とミミが顔色を変える。

「私に隠れて、そのダンスホールとやらにいらしているのではないでしょうね!」