「そんなぁ」と乙女は芝居じみた溜息を零し、悲しげに言う。

「ミミは唯一の理解者なのに……」
「確かに私は乙女様の一番の理解者だと自負しております。ですが、作家活動だけは別です!」

ビシッと言い切るミミに乙女が逆ギレする。

「ふん、なら協力は頼まないわ。私、ひとりで行く!」

こうなると乙女は厄介だ。途端にミミの態度が弱腰になる。

「お嬢様、本気じゃないですよね?」
「私が本気かどうかなんてミミには関係ないでしょう。この話から降りたんだから!」

乙女は一度言い出すとやり遂げるまで後には引かない。

「そんなぁ、本当に危ないですよ、止めて下さい」

ミミが泣きベソ顔になる。

「ひとりで行かせるのが心配なら、ついてきたらいいじゃない」

乙女の目がニヤリと笑う。

「綾鷹様にバレて叱られても知りませんからね!」
「了解! 絶対にミミに責任転嫁しません」

本当かな、と思いながらミミは諦めの溜息を吐き、「分かりました」と承諾する。