「私、このままだったら賢くなりすぎて死んじゃうかも」

夕飯も済み、ようやく一日のスケジュールをこなした乙女は自室に戻った途端ベッドに大の字になる。

「それはよろしゅうございます」

ミミの返しに乙女はムッとする。

「他人事だと思って! 綾鷹様もパーティーぐらい、おひとりで行かれたらいいのに」

「何を仰せですか!」とミミが目くじらを立てる。

「パートナーとご一緒にとお誘いを受けたら、ご一緒するのがエチケットです」

それはそうなのだが……と乙女は渋い顔をする。

「でも、それが元で死んじゃったら元も子もないと思わない?」
「これぐらいでは死にませんのでご安心下さい」

本当に大袈裟なんだから、とミミが呆れていると、「ねぇねぇ、ところで朝の話だけど」と乙女がガバッと起き上がる。

「何のお話やら」
「惚けてもダメよ!」

「はーっ」とミミの口から大きな溜息が漏れる。

「お嬢様、朝、申した通りです。化け物屋敷に興味を持たないで下さい。絶対にダメですからね。綾鷹様がお怒りになります」

「でも……」と乙女が上目遣いでミミを見る。

「小説のネタには最高の話だと思わない?」

「だからですね」とミミが顔を顰める。

「私は端っから作家活動に反対しているのですから、最高のネタなんていうものは存在致しません!」