「お嬢様! 止めて下さい、怖いじゃないですか! それに、そのキラキラお目々は何ですか! 何をお考えですか?」

ミミは厭な予感がした。

「あら、察しがよすぎてよ」
「ダメです! 絶対にダメですから」

ミミが声を張り上げたと同時に、バタンとドアが開く。

「何がダメなのですか! お食事が冷めてしまいます」
「あっ!」
「ミミ、ミイラ取りがミイラになってどうするのですか!」

「紅子さん、すみません」とミミが深々と頭を下げる。

「そうだったわ、お食事ね。ごめんなさい。私が悪かったの。ちょっとお話が弾んじゃって」

乙女が殊勝に頭を下げる。

「ここでお説教をすると私までミイラになります。どうぞダイニングに!」

有無も言わさぬ紅子の言葉に促され、乙女はミミを伴いおとなしくダイニングに向かう。



「頭が爆発しそう……」

午前中、一般教養と称した語学や行儀作法の授業を目一杯受けた乙女はクタクタだった。

昼食中も気が抜けない。「お嬢様、背筋を伸ばして!」と紅子の指導が入るからだ。

「来週、上ノ条公爵様のパーティーがあります。お嬢様は旦那様のパートナーとしてご一緒頂きます」

そう言われたのは今週の頭だった。その日から紅子の指導は益々厳しくなった。