恋し、挑みし、闘へ乙女

「綾高様、その手をお離し下さい!」

キツイ声が飛んできた。

「エッ!」とその声の主に目を向け、乙女は唖然となる。
思ってもいなかった人物がそこにいたからだ。

「どっどどどどうして、ミミがここに?」
「私が桜小路家にお願いしたのだよ」

答えたのはミミではない。綾鷹だ。

「はい? 貴方が?」
「君がひとりで心細いだろうと思ってね」

「という訳です」とミミがニッと笑む。

「じゃあ、ミミも一緒にここにいられるの!」
「私がお見合いをするまでですよ!」

「嬉しい!」と乙女がミミに抱き付く……がハタと気付き囁く。

「お兄様の近くにいられなくていいの?」
「萬月様に『よろしく頼む』と仰せつかって参りましたので」

なるほどとニンマリする乙女にミミが言う。

「お嬢様、それより何より綾鷹様にお礼を言う方が先です」

ミミに抱き付いたまま、乙女はチラリと綾鷹を見る。そして、「ありがとうございます」と小さく頭を下げる。

「彼女は君付きのメイドだ。君に関すること以外、何もさせなくていいから」

綾鷹の言葉に乙女は再度礼を言い頭を垂れる。

「三奈階君、メイド頭の紅子さんには会ったかい?」

「はい!」と元気に返事をして、「お嬢様、紅子さんって駒子さんの悪友なんですって!」とミミは大ニュースとばかり乙女に報告する。すると、「ストップ。そこまでです」と声がかかる。

「坊ちゃま、お帰りなさいませ」