「これも、また何か仕掛けがあるんでしょう!」

すっかり疑心暗鬼の乙女に綾鷹は苦笑いを浮かべ、「違うよ」と優しく微笑み、涙に濡れた頬にソッとキスをする。

「乙女、結婚しよう。これは婚約指環だ」

目を見開いた乙女の瞳からまた新たな涙が溢れ出すが、今度は怒りや悔しさの涙ではない。

「あっ、でも、ほらやっぱり」

胸を抑えながら乙女は濡れた瞳で小さく綾鷹を睨む。

「貴方は嘘つきだわ。こんなに私をドキドキさせるなんて……」
「ふーん、ドキドキするんだ」
「絶対に何か装置が取り付けてあるんだわ」

ニヤリと笑った綾鷹が両手を前に突き出し広げた。

「乙女、おいで。その装置は僕じゃなきゃ静まらない」
「――本当、策士な人ですね」

そう言いながらも乙女は満面の笑みを浮かべ綾鷹の胸に飛び込んだ。そして、「私を幸せにする装置を付けたの?」と言いながら彼の頬にチュッとキスをした。



THE END