「はい?」と鏡卿の腕の中で乙女が振り返る。

「お気付きだったのですか? いい加減、乙女から手を放してもらいましょうか、鏡卿」

いつの間に……? ドアの前に立っていたのは、たった今、愛の告白をした相手だった。

「嘘! どうして?」

乙女は混乱と恥ずかしさから、ギャーと声にならない悲鳴を上げ鏡卿の胸に再び顔を埋める。

「おやおや、可愛い人だ。梅大路君、これは不可抗力だからね」

そう言いながらも鏡卿は、綾鷹に対する嫌がらせのように乙女をギュッと抱き締める。

ツカツカと足音が近付き、グイッと乙女の腕が引かれる。

「君は愛の告白をしたばかりだというのに、もう、他の者と浮気をするのか!」

ポスンと綾鷹の胸に抱かれ、息も出来ないほど強く抱き締められる。

「――よかった無事で……」

囁くような声と共に綾鷹が深く息を吐き出す。
そして、乙女を抱いたまま鏡卿に目を向ける。

「お初にお目に掛かります」
「そうだったね。実物の君に会うのは初めてだね」

「画面の中より断然こちらの方がいい男だ!」

クスクス笑いながら鏡卿はまたソファーに腰を下ろした。

「パソコンで世界を覗き見していらしたのですね?」

綾鷹の質問を鏡卿はコホンと咳払いで誤魔化す。

「それより、よくここが分かったね」
「愛があれば当然です」

綾鷹が愛しげに乙女を見つめる。