「糸子は嫉妬から間違った判断で貴女に迷惑をかけたわ。そのお詫びも兼ねて梅大路綾鷹と話したいの。私たち軍団は決して反社会的に国家を揺るがそうだなんて思っていない。発展を願っている」

吹雪の真剣な眼差しに嘘はない。だからだろう、乙女は早々に電話をかける。

「綾鷹様?」
《乙女かい? 珍しいね》

優しい綾鷹の声が電話の向こうから聞こえた途端、乙女の心がホッと安堵する。
乙女がザッと説明すると、綾鷹は一も二もなくOKする。

《分かった。隠密に彼女と会おう。今、そこにいるのかい?》

「はい」と答える乙女に、綾鷹が吹雪と代わるように言う。

二人の間にどんな話がなされたのか乙女には分からないが、始終落ち着いた態度で応答していた吹雪に、打ち合わせは平穏に終わったのだと理解する。

「じゃあ、今日はこの辺で。次回作も期待しているわ」
「了解です。私はもう少しプロットを練ってから帰ります」

食事を済ませた後、喫茶コーナーに席を移し、アフターのコーヒーを堪能した吹雪は「さあて、仕事仕事」と言いながら忙しなく店を出て行く。

その後ろ姿を見送り、乙女は「うーん」と大きく伸びをする。

「さて、私も仕事モードに戻るとしますか」